気がついた時には、僕は独りだった。
いや、独りじゃなかった時なんて無かったのだろう。
生まれ落ちた瞬間から僕の声は親に聞こえていないようだった。
どれだけ声を出しても
誰にも届かない。誰も振り向かない。
暗い海の中、一際高く奇形な声が遠くまで響き渡る。
今はもう誰かに伝えるために声をだすことは無くなった。
ただ、時折どうしても胸がしくしくと痛くなってしまうので、祈りにも似た想いを声に出す。
「僕はここだよ……ここにいるよ…。」
誰にも届くことのない叫びは
反響すること無く遠くまで響き渡る。
52ヘルツの鯨
コメント